津軽言語学
津軽弁辞典
さ
- ~(さ)いね【(sa)ine’】
- 口語~(せ)ない。~することができない(不可能)。【例】さ・いね=でき・ない、はっけら・いね=走れ・ない。
- ~(さ)いる【(sa)ilu’】
- 口語~(さ)れる(受動態)。【例】はっけらさ・いる=走らさ・れる。のまさ・いる=飲まさ・れる。
- ~(さ)さる【sa’lu】
- 口語成り行き上、自動的に行われる状態。【例】あす、こらさる=明日、来れますか。【例】どしても、しゃべら・さる・っきゃぁ=どうしても、言って・しまう・でしょ。
- ~(さ)なが【(sa)naga’】
- 口語~(し)なさいよ。~(し)たらいいよ。【例】すぎだぐ・さなが=好きなように・しなさいよ。
- ~(さ)ね【(sa)ne’】
- 口語~(し)ない。【例】さ・ね=し・ない。はっけ・ね=走ら・ない。
- ~(さ)へる【(sa)helu’】
- 口語~(さ)せる(使役)。【例】はっけさ・へる=走ら・せる。のま・へる=飲ま・せる。
- ~(し)ちゃぁ【(si)cha’:】
- 口語~(し)ていた(過去完了形)。「知って」や「待って」「寝て」のように、「て」が続く語に用いる。【例】しっ・ちゃぁ=知って・いた。ねっ・ちゃぁ=寝て・いた。
- ~(し)ぢゃぁ【(si)ja’:】
- 口語~(し)ていた(現在完了形)。「噛んで」や「しゃがんで」「読んで」のように、「で」が続く語に用いる。【例】あさい・ぢゃぁ=歩いて・いた。ね・じゃぁ=寝て・いた。
- ~(し)ちゅう【(si)chu’:】
- 口語~(し)ている(現在進行形)。「知って」や「待って」「寝て」のように、「て」が続く語に用いる。【例】しっ・ちゅう=知って・いる。ねっ・ちゅう=寝て・いる。
- ~(し)ぢゅう【(si)ju:】
- 口語~(し)ている(現在進行形)。「噛んで」や「しゃがんで」「読んで」のように、「で」が続く語に用いる。【例】あさい・ぢゅう=歩いて・いる。ね・じゅう=寝て・いる。
- ~(し)てあった【(si)teatta’】
- 口語→(し)てった
- ~(し)であった【(si)deatta’】
- 口語→(し)でった
- ~(し)てぇ【(si)te’:】
- 口語~(し)たい(希望)。【例】はっけ・てぇ=走り・たい。のみ・てぇ=飲み・たい。
- ~(し)てった【(si)te’tta】
- 口語~(し)ていた(過去)。「知って」や「待って」「寝て」のように、「て」が続く語に用いる。【例】しっ・てった=知って・いた。ねっ・てった=寝て・いた。
- ~(し)でった【(si)de’tta】
- 口語~(し)ていた(過去)。「噛んで」や「しゃがんで」「読んで」のように、「で」が続く語に用いる。【例】あさい・でった=歩いて・いた。ね・でった=寝て・いた。
- ~(し)てまる【(si)tema’lu】
- 口語~(し)てしまう。【例】はっけ・でまる=走って・しまう。のん・でまる=飲んで・しまう。
- ~(し)へ【(si)he’】
- 口語~しなさい。【例】ね・へ=ね・なさい。こい・へ=来なさい。
- ~(す)っきゃ【(su)kkya’(:)】
- 口語~(す)るよね。【例】はっける・っきゃ=走る・よね。のむ・っきゃさ=飲む・よね。
- ~(す)っきゃさ【(su)kkyasa(:)】
- 口語→(す)っきゃ
- ~(す)ったらだ【(su)ttalada】
- 口語(し)・そうな、(し)・そうだ。【例】め・ったらだ=美味し・そうだ。くる・ったらだ・かんじ=来・そうな・感じ。
- ~(す)っちゅうが【(su)cchu(:)ga】
- 口語(する)というか。【同】す・ってすが。【例】くる・っちゅうが=来る・というか。
- ~(す)ってすが【(su)tte’suga】
- 口語(する)というか。【同】す・っちゅうが。【例】くる・っちゅうが=来る・というか。
- ~(す)ど【(su)do’】
- 口語(~する)そうです。【例】まま・く・ど=ご飯を・食べる・そうです。
- ~(す)はんで【(su)ha’nde】
- 口語(する)から。【例】くる・はんで=来る・から。
- ~(す)びょん【(su)byo’n】
- 口語~(する)だろう(予想)。【例】はっける・びょん=走る・だろう。のむ・びょん=飲む・だろう。【参】南部では「~(す)ごった」。
- ~(せ)へ【(se)he’】
- 口語~しなさい。【例】よべ・へ=呼び・なさい。かえれ・へ=帰りなさい。
- ~さ【sa】
- 口語(場所・人・物)に。【例】わぁ、あおもり・さ・いがにゃぁ・まいね=私、青森・に・行かなきゃ・ならない。
- ~すぅ【su’(:)】
- 動<他・五段>~する。【例】べんきょう・すぅ=勉強・する。べんきょう・さね=勉強・しない。
- ざい(在)【za’i】
- 名田舎、僻地。【派】じゃいご(名)=田舎者。
- さいぎさいぎ(懺悔懺悔)【saiηisa’iηi】
- 名岩木町で行われる祭り、お山参詣。そのかけ声が「サイギサイギ、ロッコンサイギ(懺悔懺悔六根懺悔)」であるため。
- さがしぃ【sagashi’(:)】
- 形頭がいい、賢い。
- さがぶ【sagabu’】
- 動<他・五段>大声で怒鳴る、怒る、呼ぶ。
- さきた【sakita’】
- 名さっき、さきほど。
- さげっこ(酒っこ)【sagekko’】
- 名酒。主に日本酒を指す。
- ささる(刺さる)【sasa’lu】
- 動<ラ・五段>(車が雪の積んである所に)突き刺さる。
- さし(尺)【sasi’】
- 名ものさし、定規。
- さすねぇ【sasune’(:)】
- 形うるさい。
- さだだ【sadada’】
- 形動困った事だ、厄介だ、大変だ。
- さっと【satto’】
- 副少しだけ、優しく。【例】こし・やめぇ・はんで、さっと・もんで・けぇ=腰・痛い・から、優しく・揉んで・下さい。
- さっぱ【sappa’】
- 連体さっぱり。「さっぱど」の略。【例】さっぱ・わがんねぇ=さっぱり・わからない。
- さっぱすぅ【sappa’su(:)】
- 動<自・五段>さっぱりする。【派】さっぱど=さっぱり。
- さっぱど【sappa’do】
- 副さっぱり。【例】さっぱど・すぅ=さっぱり・する。
- さど【sado’】
- 名砂糖。【派】さどめぇ=(砂糖が多くて)甘い。
- さどめぇ【sadome’(:)】
- 形(砂糖の味がして)甘い。
- さふろ【sa’hulo】
- 名スコップ。
- さもだし【samoda’si】
- 名キノコの一種、ナラタケ。津軽地方でよく食される。
- さんけぇ(参詣)【sanke’:】
- 名旧暦8月1日に岩木山で行われる祭り「お山参詣」。
- さんじ(匙)【sa’(n)zi】
- 名スプーン。
- さんじゃらっと【sanjala’tto】
- 副さらりと、ちょっと、うっすらと。
- さんと(産人)【santo’】
- 名子どもを産む人、妊婦。
- さんび【sa(n)bi’(:)】
- 形寒い。
し
- じぇんこ(銭こ)【jenko’】
- 名お金。【例】じぇんこ・ねぇ=お金が・ない。
- しかふぇる【sikafelu’】
- 動<他・下一>→しかへる。
- しかへる【sikaheru’】
- 動<他・下一>教える、知らせる。【例】この問題・わがんねぇはんで、しかへで・けぇ=この問題・わからないから、教えて・頂戴。
- じぎ【jigi’】
- 名肥料、養分。
- じぐ(軸)【jigu’】
- 名度胸。【派】じぐなし(名)=度胸なし。
- じぐなし(軸無し)【jiguna’shi】
- 名小心者、恐がり。【派】じぐ(名)=心の芯。じぐねぇ(形)=小心である様子。【参】じぐ+なし。
- じぐねぇ(軸ねぇ)【jigu’ne(:)】
- 形度胸がない。【派】じぐなし(名)=度胸なし、意気地なし。
- しげねぇ(繁ねぇ)【siηene’(:)】
- 形寂しい。元気がない。
- しける(仕換る)【sike’lu】
- 動<他・下一>交換する。【例】そろそろ・冬タイヤ・さ、しけ・ねばのぉ=そろそろ・冬タイヤ・に、交換し・なきゃなぁ。
- しける(湿気る)【sikelu’】
- 動<自・下一>湿気で湿ってしまう。【例】この・せんべ・しけって・まっちゃぁ=この・煎餅・湿って・しまっている。
- じさま(爺様)【jisama’】
- 名お爺さま。【対】ばさま(名)=おばあさま。【同】じっちゃ、じっこ。
- したしゃっつ(下シャッツ)【shitasha(t)tsu’】
- 名(下着の)シャツ。
- したって【sita’tte】
- 口語だって。【例】したって、なぁ、したって・した・っきゃ=だって、君が、やったって・言った・じゃないか。
- したばって【sitaba’tte】
- 口語しかし。【類】だばって=だけど。
- したはんで【sitaha’nde】
- 口語①だから。②言ったから。
- しちんじゅ(七十)【sitinju’(:)】
- 名七十。
- しっけぇ【sikke’(:)】
- 形<グ>酸っぱい。【同】すっっけぇ。
- じっこ(爺っこ)【ji’kko】
- 名ジジィ。【対】ばば(名)=ババァ。【同】じっちゃ、じさま。
- じっちゃ(爺っちゃ)【ji’ccha】
- 名お爺ちゃん。【対】ばっちゃ(名)=おばあちゃん。【同】じさま、じっこ。
- しなぶる【sinabulu’】
- 名<他・五段>しゃぶる。【例】指っこ・しなぶる=指を・しゃぶる。
- しなべる【sinaberu’】
- 動<自・下一>鮮度が落ちて潤いがなくなる。【例】この・でぇごん、しなべじゃぁ=この・大根、シワシワにしおれている。
- しねから(臑から)【sinekala’】
- 名(足の)すね。【同】すねから。
- しばらぐでした【si(n)ba’lagudesita】
- 口語お久しぶりです。
- しばれる(凍れる)【si(n)bale’lu】
- 動気温が下がって、冷え込む。【例】けさ、しばれ・じゃっきゃ=今朝は・冷え込み・ましたね。
- しびたがれ(虱集れ)【si(n)bitagale’】
- 名虱(しらみ)がたくさん付いているような人。
- しみどうふ【simido’:fu】
- 名凍り豆腐。
- しみらがす【simiraga’su】
- 動<他・五段>凍らせる。【派】しみる(自)。
- しみる【shime’lu】
- 動<自・下一>凍る。【派】しみらがす(他)【例】けんど・しみで・まっちゃ=道路が・凍って・しまっている。
- しゃぁねぇ【sha’(:)ne(:)】
- 形しょうがない。【同】どうしょもねぇ。
- じゃいご(在郷)【ja(i)ηo’】
- 名田舎、田舎者。【派】ざい(名)=田舎。
- じゃがら【ja(n)ηala’】
- 名祭で使う楽器「手摺鉦」。
- しゃぐし(杓子)【shagu’shi】
- 名(調理器具の)お玉
- じゃける【jake’lu】
- 動<自・下一>(雪が解けて)グチャグチャになる。【同】じゃげる。
- じゃげる【jagelu’】
- 動<自・下一>(雪が解けて)グチャグチャになる。【同】じゃける。
- しゃっけぇ【shakke’(:)】
- 形<グ>冷たい。【同】しゃっこい。【対】あっつぅ。
- じゃっこ【jakko’】
- 名(生き物としての)魚。【派】じゃっこ・つり=魚・釣り。
- しゃっこい【syakko’i】
- 形<グ>冷たい。【同】しゃっけぇ。【対】あっつぅ。
- じゃっぱ(雑端)【jappa’】
- 名(魚の)あら。【派】じゃっぱじる(名)。
- じゃっぱじる(雑端汁)【jappaji’l】
- 名津軽の郷土料理「じゃっぱ汁」。鱈の骨や内臓などをみそ仕立てで汁にした物。
- しゃべる【sha(n)be’l】
- 動<他・下一>言う。津軽では「言う」はあまり用いない。【同】すぅ。
- じゃま【jama’】
- 名身長、たっぱ。
- じゃわめぐ【jawame’gu】
- 動<自・五段>背筋がザワザワと寒気がする。
- じゃんぼ【ja’nbo】
- 名髪の毛。【例】じゃんぼ・かに・いぐ=髪の毛を・刈りに・行く。
- じゅうめ【ju(:)me’】
- 名(山菜の)ぜんまい。
- しゅどばさま(姑婆様)【syudobasama’】
- 名夫または妻の母。しゅうと。【同】しゅどばば。
- しゅどばば(姑婆)【syudobaba’】
- 名夫または妻の母。しゅうと。【同】しゅどばさま。
- じょっぱり(情張り)【joppali】
- 名①意地っ張りな人。【派】ごじょっぱり(名)。②津軽地方の地酒の名称。③「津軽情張り太鼓」
- じょっぱる【jo(p)pa’l】
- 動<他・五段>強情を張る。【派】じょっぱり。②弘前市大町にある建物の名称。
- じょっぱる【jo’(p)pal】
- 動弘前市大町にある建物の名称。
- じょで【jode’】
- 副ほとんど、全く。【例】じょで・まね=全然・駄目だ。
- しょぺぇ【sho(p)pe’(:)】
- 形<グ>塩辛い、しょっぱい、味が濃い。【対】あめぇ(形)。
- しょる【syolu’】
- 動<他・下一>背中に背負う。
- じょんずだ【jonzuda’】
- 形動①上手い、上手だ。②口がうまい。
- じょんばけっつ【jonbake’ttsu】
- 名お尻が大きく、出っ張っている人。
- しょんべ(小便)【shonbe’】
- 名小便、尿。【参】ばば=大便。
- しらっぱつける【sila’ppatsukelu】
- 動<自・下1>色落ちして白っぽくなる。【例】そした・しらっぱつけだ・シャッツ・きて=そんな・色落ちしたような・シャツを・着て。
- しれぇ【sile’(:)】
- 形<グ>白い。
- しんけたがり(神経集り)【si’nketaga’li】
- 名神経質な人。【派】しんけたがりだ(副)
- しんけたがりだ【shinke(:)taga’lida】
- 形動神経質な。【派】しんけたがり(名)=神経質。
- しんじゅ(四十)【sinju’(:)】
- 名四十。
- しんねぇ【sinne’(:)】
- 動<自・下一>堅くて噛み切れない。【例】この肉、しんねして・かいねぇ=この肉は、噛み切れなくて・食べられない。
- しんびずげねぇ【si’nbizugene’(:)】
- 形<グ>服装がだらしがない。
- しんぷたれる【shi’nputalel】
- 動<自・下一>古びるてヨレヨレになる。
す
- すぅ【su’(:)】
- 動<自・五段>①する。【派】~すぅ(動)。②言う。津軽では「言う」はあまり用いない。【同】しゃべる。
- すが【suga’】
- 名スイカ。
- すがっこ【sugakko’】
- 名スイカ。「すが」の丁寧形。
- すがま【suηa’ma】
- 名つらら。
- すぎだぐ(好ぎだぐ)【sugida’gu】
- 副好きなように。【例】すぎだぐ・さなが=好きなように・すればいいよ。
- すぎづれ(好ぎ連れ)【sugizule’】
- 名恋愛結婚
- ずぐり【zuηu’li】
- 名独楽(こま)。
- すずがる【su(n)zugalu’】
- 動構う、ちょっかいを出す。【同】かもる。
- すっかど【sukka’do】
- 副全く、全然。【例】すっかど・ねぇ=全く・ない。
- すっけぇ【su(k)ke’(:)】
- 形<グ>(発酵して)酸っぱい。【例】すっけぇ・かまり・すぅ=酸っぱい・臭いが・する。【同】すっぺぇ。
- ずっぱど【zuppa’do】
- 副深くはまってしまう様子。ずっと。全部。
- すっぱね(すっ跳ね)【su(p)pane’】
- 名泥はね。
- すっぺぇ【suppe’(:)】
- 形<グ>(酢のように)酸っぱい。【同】すっけぇ。
- すねから(臑から)【sunekala’】
- 名(足の)すね。【同】しねから。
- ずぼんした(ズボン下)【zubo(n)shita’】
- 名股引。
- ずるすけ【zurusuke’】
- 名ずるい奴、悪ガキ。
- ずんぶ【zu’nbu】
- 副ずいぶん。【例】ずんぶ・はっけだ・べぇ=ずいぶん・走った・でしょう。
せ
- せぎ【se’gi】
- 名【地名】碇ヶ関(いかりがせき)。津軽藩と秋田藩の関所があった場所。
- せば【seba’】
- 口語それでは。【例】せば、どんだの=じゃぁ、どうなの。
- せばだば【se(n)bada(n)ba’】
- 副それなら、だったら、じゃぁ。【例】せばだば・いい・ばって=そうなら・いい・けど。
- せばのぉ【se(n)bano’:】
- 口語それではさようなら。
そ
- そい【soi’】
- 名①そいつ、その人。②それ。
- そごだり(其処辺り)【sogo(n)da’li】
- 名そこらへん。【例】そごだり・さ・ある・びょん=そこらへん・に・ある・だろう。
- そっちゃ【so’(c)cha】
- 副そっちに、そちらへ。【例】そっちゃ・いへ=そこに・居なさい。【派】こっちゃ=こちらへ。あっちゃ=あちらへ。
- そらで【sorade’】
- 名手首の腱鞘炎。
- そらはんど【so’lahando’】
- 副そんなに、それほど。【例】そらはんど、いらねぇ=それほど、要らない。【派】こらはんど=これほど。あらはんど=あれほど。
- そんだ【sonda’】
- 口語そうだ、その通りだ。【派】あんだ=ああだ、あの通りだ。